元大学職員のスピーチ

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大学の地方移転

こんにちは、星野マリエです。

 

週1回ブログを更新するルールを設けたのに、あっさり1ヶ月半で破ってしまいました…。きちんとした文章を書くというのは、思っていた以上に労力の必要なことなんですね。ブログだし、論文と違って軽く書けるだろ〜と思っていた自分に喝を入れたい。なるべく正確なことを書きたいと思うと、意外に時間がかかります。これからもなるべく週1回ルールを厳守して、きちんとした文章を書いていきたいと思いますので、ぜひ気長にお付き合いいただけますと嬉しいです。

 

さて、今日はタイトルの通り「地域創生と大学」をテーマに少し書いていきたいと思います。

 

この記事を書こうと思ったきっかけは、下記のニュース。

zasshi.news.yahoo.co.jp

 突っ込みたいことはいくつかありますが、記事の内容やクオリティについては置いておきます。上記の記事をザクッと簡単に事実だけまとめると、こんな感じです。

 

日本の大学は世界から取り残されている!!

         ↓

政府は大学を地方移転させたいと思っているよ

 

はい。記事は論点がかなり飛躍?間違って?いると思うのですが、それは置いておいても、確かに「大学を地方移転させよう」という議論は行政の中でなされています

 

議論の主体は「まち・ひと・仕事創生本部」。これは、今何かと話題になっている「地方創生」に取り組む事務局です。人口急減・超高齢化という課題を解決するために、各地域がそれぞれの特徴を活かして、自分たちでこれからもずっと維持していけるような社会を作ることを目標に、様々な議論や施策の実行を担っています。(ちなみに、地方創生に取り組むのは「まち・ひと・仕事創生本部」だけではなく、「内閣府地方創生推進事務局」という組織もあります。二つの組織が連携し合って地方創生に取り組んでいるようです。)

 

その「まち・ひと・仕事創生本部」が設けた「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」の第1回が、先日2月6日に行われました。会議の資料を見てみると、論点の中に「東京の大学・学部の地方移転(サテライトキャンパス等)についてどう考えるか」というものも入っています。

 

www.kantei.go.jp

 

資料をもとに思考プロセスをたどると下記の通り。「まち・ひと・仕事創生本部」のHPに掲載されている資料の中では、総務省統計局の調査結果などを示しながら議論を進めています。

 

人口が東京に一極集中している。地方を担う人材の育成と確保が急務。

②東京など大都市圏に人口が集まるきっかけは「大学進学時」にありそう。

  a)東京圏への転入の大半は「15〜19歳」「20〜24歳」の層

  b)10代、20代の東京圏への転入理由は「進学」「就職」が多い

  c)東京圏に移動した人のうち、東京圏での生活を志望したのは半数程度

③東京圏の進学者のうち、約35万人が地方出身者だと推察できる

④企業の本社機能一部移転や地方に本社を置く企業への支援を行い、仕事を地方に。

 大学も地方に持ってくることで、若者の大都市圏流出を減らせるのでは?

 

大学進学時に大都市圏へ若者が出ることで、地域から若者が流出してしまうなら、大学を地域に持ってくれば若者の流出が収まるのではないか、という議論の流れのようです。

 

学費が安くて、家から通える範囲の大学を選ぶ傾向にある最近の高校生。遠方にあった大学が都心回帰をするのがトレンドの現在に、大学のある学部が地方移転をしたとして、早慶クラスの大学でも、どれだけの志願者が集まるでしょうか。志願者が集まったとして、果たしてどれだけその地域に若者が定着するかについては疑問に感じるところが大きいです。

 

問題の根本は、魅力度が「地元<東京・大阪・名古屋・博多」となってしまうところにあるのではないでしょうか。だって明らかに東京、大阪、名古屋、博多の方が生活してて楽しい。遊ぶ場所、買い物する場所、食事をする場所、全てにおいて大都市圏の方が特色があって、選択肢がたくさんあって、楽しいのです。地方に行くと、幹線道路沿いに車販売店、松屋とか中華麺的なラーメン屋さんとか、マックくらいしか見当たらない。買い物をするにも、商店街はシャッター通りと化し、イオンとかしまむらくらいしかない。駅前も地元のデパート(おばあちゃんしか見かけない)と地銀、駐車場とその地域の有名な人の銅像くらいしか見当たらない。

 

大学を地方移転させるだけではなく、地方に用途不明の施設を建てるのではなく、「生活者」にとって魅力的な地域を作っていくことが求められているような気がします。

 

とはいえ行政が決定したことは、大学という組織、守っていかねばなりません。まして大学の地方移転となると、キャンパス整備や学生募集などの面で大きなエネルギーが必要になってきます。今後の議論の展開を見守っていきたいと思います。

 

以上、星野マリエでした。

CU:)

 

P.S.  ちなみに…今、大学業界では「地域活性化」というのもホットなキーワードです。グローバル展開を目指す大学がいる一方で、いかに地域密着型で存在できる大学になるかということを考えている大学もあります。文部科学省も「地(知)の拠点大学事業」や「私立大学等改革総合支援事業 タイプ2 地域発展」など、地域連携・地域貢献・地域発展に関して特色ある取り組みを行う大学に補助金を交付しています。

 

就職活動や転職活動で大学職員を目指す方は、自分の志望する大学がどのような取り組みを行っているか調べてみると、その大学が目指すところが見えてくるかもしれません。