元大学職員のスピーチ

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大学は「社会のニーズに合わせる」だけでいいのか

「大学は社会や時代のニーズにあった教育、人材育成をすべき」

最近こういう論調を高等教育関連のニュースやら論評やらでよく見かける。

 

確かに教育のあり方の最適解は時代に合わせて変化するし、AI時代、グローバル化時代と言われている今にふさわしい教育方法はあるのだと思う。

 

けれど、大学は時代や社会のニーズに合わせているばかりでいいのだろうか、とも思う。

 

ちょっと前、マンガ好きが高じてけんすうさん主催の「マンガサロン」に入った。このサロンはマンガ好きが集まって交流するコミュニティであるだけでなく、これからのマンガ界が盛り上がるように新しいサービスを作っていこうとしている。新しい漫画サービスを立ち上げる背景には、「マンガを描く人が増え、マンガを読む人が増え、これからの時代も面白いマンガにたくさん出会えるようにしたい」というサロン主催者の想いがある。もちろん、サービスを作る上では収益を上げないと継続的な運営ができないし、利益を考える部分もあるのだろうけれど、今作られている新サービスは「こういう世の中にしたい」という想いもすごく込められているものだと思う。

 

私たちが日頃触れているサービスは、社会のニーズ、時代のニーズを読み取って作られたものも多い。しかし、「世の中こうだったらいいのにな」というサービスの作られ方もある。

 

大学も「社会のニーズを」「時代のニーズを」読んで合わせろ、と言われるけれど、大学ばかりが社会・時代のニーズに合わせるだけで良いのか。大学で行われている様々な研究は、「世の中こうだったらいいのに」「こういうものがあれば役立つのではないか」という疑問から発生しているものも沢山ある。人材育成という側面で言えば、特に私学は育てたい人材像があって作られた学校である。各大学には、それぞれ今の時代に合わせた「育てたい人材像」というものが少なからずあると思う。

 

で、大学がこの文章の冒頭のようなニーズ論に巻き込まれるのは、各大学の人材育成や研究への取り組みが世の中に思っている以上に伝わっていないのも原因としてあるかもしれない。(産休育休中ということもあって、今私はあえて自大学のニュースを積極的に取りに行かないようにしているのだけど、取りに行かないと全然情報が入ってこない。有名大学の情報も、駅伝とか入試とかの類の情報しか入ってこない。)

 

だからこそ、大学の広報も意義の深い仕事であって、大学の人材育成・研究その他の取り組みを世の中にもっともっと知ってもらえるよう手をつくす必要があるのだと思う。

 

以上です。