元大学職員のスピーチ

元大学職員。PR会社に転職しました。//大学職員の仕事、大学職員論、大学教育に関する話題はこちらに書きます。//noteでは、広報PR、働き方などを発信中。https://note.com/mariehoshino

【読書記録】「ワタクシハ」羽田圭介

「就職活動」というと何を思い浮かべる・思い出すだろう。

世代によって思い浮かべるやり方、風景は違うのではないだろうか。

 

昨日読了した羽田圭介さん著『ワタクシハ』は、リーマンショック後2009年ごろの就職活動を描いた小説だ。

 

主人公・太郎は高校時代に超技巧系のギタリストとして、メタルバンドでメジャーデビューを果たす。しかし、バンドは諸事情で解散。大学に進学するも、プロのギタリストとしては鳴かず飛ばずで、3年生を迎えた時に周りの影響を受けてなんとなく「就職活動」を開始する。

自分はメジャーデビューをした”人と違う人間である”というプライドと、希望する企業から内定をもらえない現状に葛藤しながら、自分の生き方やなんとなく始めた「就職活動」に真剣に向き合っていく。

 

ストーリーはざっと 上記の通り。

「就活は学生側も採用する側も、非常に曖昧な基準で動いているのだ」、「就職活動がゴールではなく、その先に働くことと人生が続いているのだ」という筆者の「就職活動」を捉えた視点が物語の中で何度も感じられる小説である。

 

これから就職活動を控えている人、就職に関するあらゆるビジネス・支援に携わっている人には、若い世代が経験している「就職活動」がどういうものなのかを疑似体験するためにも是非読んで欲しい。

 

日本の就職活動は、不思議な仕組みだと思う。

採用、不採用の確率がその年の景気動向でガラリと変わってしまう。

就職氷河期の時代、リーマンショック後およそ5年の間に就活をした人は、今の就活生に比べて非常に厳しい条件の中で戦ってきた。(昨日の日経朝刊、平成30年間を振り返る記事の中に新卒採用の求人倍率が載っている。気になる方は是非チェックを。)人生に”タラレバ”は良くない。「もしも〜していたら」なんて考えて憂いている時間が無駄である。しかし、それでも少し考えてしまう。厳しい時代に就活を経験した人が今大学生に戻って就活をしたら、希望の企業に入れていた人も多くいるのではないか。そう思うと、「就職活動」とはなんとも不平等なシステムだと思わざるをえない。

 

そして、自分に適した仕事を新卒の就職活動時期に決めるというのも、人生100年と言われているこの時代に非常に乱暴な話である。若手が早くに辞めて転職活動市場が賑わうというのも頷ける話。企業で実際に働くことができるインターンシップが徐々に増えているのも、良い流れだと個人的には思う。生き方、価値観は人生の途中で変わることもある。副業を始め、働き方や人材の流動性はもっと柔軟でいいのではないかと常々思っている。

 

いつか人事や就職課など、「働くこと」に関わる仕事をしたい。働き方や働くことに関する考え方を少しでも変えることができたら、人生をもっとハッピーに過ごせる人が増えるのではないか。自分自身の経験や周りの友人・知人を見ていて、そう思う。広報も面白いし、やりがいはあるのだけれど。

 

以上、大晦日の夕方に星野マリエが思ったこと、でした。